「酒は百薬の長」は本当?
こんにちは。
管理栄養士の仲村です。
2019年も今日でおわり。
介護・福祉の現場で働く皆さまは、
年末年始も変わらず働く方が
多いですよね。
いつもお疲れ様です。
ありがとうございます!
さて、そんな中でも
忘年会や新年会でお酒を飲む機会は
増えるのでないでしょうか。
今回はそんなお酒について。
「酒は百薬の長」
という言葉はよく聞きますよね。
昔の中国(漢)の書物
『漢書・食貨志下』に
書かれていることばで、
「お酒はどんな良薬よりも
効果がある」
という意味だそうです。
一方、日本の昔の書物
『徒然草』には
「百薬の長とはいへど、
万の病は酒よりこそ起れ」
ということばがあります。
「酒は百薬の長
とはいうけれど、
多くの病気は
酒から起こっている」
という意味。
さて、
どちらが正しいのでしょうか。
最新の研究を元に解説していきます。
▶︎アルコール
お酒には色々な種類があります。
ビール、日本酒、ハイボール、
焼酎、ワイン、、、
お酒と健康について考えるとき、
お酒の種類はいったん無視して、
それぞれのお酒に入っている
「アルコール」の量に注目します
例えば
同じアルコールの量で、
色々なお酒を比べてみましょう。
・ビール中ジョッキ1杯(500ml 5%)
:アルコール20g
・日本酒1合(180ml)
:アルコール22g
・ハイボール1杯(350ml 7%)
:アルコール20g
・焼酎水割り1杯(焼酎45ml)
:アルコール10g
・ワイン1杯(110ml)
:アルコール11g
ビールを一気に飲んでしまうのも、
日本酒を1合ちょびちょび嗜んだり
ゆっくりとワインを2杯飲んだりするのも
からだに入るアルコールの量
としては
同じということです。
▶︎適量の飲酒は
循環器疾患を予防するが...
様々な研究により、少量の飲酒であれば、
心筋梗塞や脳梗塞の
リスクは変わらないか、
もしくは飲まないよりも
少なくなるとされています。
(健康でお酒が飲める人の場合)
例えば2018年に出された
論文をご紹介します。
(Wood AM et al.Risk thresholds
for alcohol consumption:
combined analysis of
individual-participant data
for 599 912 current drinkers
in 83 prospective studies.
Lancet. 2018; 391:10129 1513-1523)
この研究では
19か国の高所得国、
約60万人について調べています。
その結果、1週間に
アルコール100gまでであれば
心筋梗塞や脳梗塞での
死亡リスクは上がりませんでした。
1週間にアルコール100gというのは
ビール中ジョッキ(もしくはロング缶)
5杯まで。
つまり休肝日を週に2日作って、
1日1杯まで。
それ以上だと
心筋梗塞や脳梗塞のリスクが
上昇します。
普段のご自分の飲酒量は
どうですか?
また、この研究は
“現在飲酒している”
“心筋梗塞や脳梗塞に
なったことが無い”
人を対象にした研究です。
つまり、
普段お酒を飲まない人が
無理をして飲んだり、
すでに病気のある人が再発を
予防するために飲むことは
絶対にしないように
してくださいね。
▶︎少しの飲酒でも
がんのリスクが上がる!
健康な人は、少しの飲酒であれば
心筋梗塞や脳梗塞の
リスクが下がることを
お伝えしました。
では、やはり酒は
百薬の長なのでしょうか?
いいえ。
そうではないのです。
実は、がん(特に肝がん、大腸がん、
食道がん、乳がん)のリスクは
ほんの少しの飲酒であっても
上がることが分かっているのです!
次に、別の研究をご紹介します。
GBD 2016 Alcohol Collaborators.
Alcohol use and burden for 195
countries and territories,
1990-2016: a systematic analysisfor
the Global Burden of Disease
Study 2016.Lancet.
2018;392:10152 1015-1035
この研究は、世界195か所で行われた
592個の研究を総合して
検証した研究の分野では
とても信頼性の高い研究です。
心筋梗塞や脳梗塞、
がんなどに限定せず、
色々な病気のリスクを総合して
“健康”でいるには
お酒とどう付き合うのがよいか
調べた研究です。
その結果、
健康でいるために
最も好ましいのは
お酒が0杯の時である
という結果になりました。
▶︎結局どうしたらいいの?
現状の色々な信頼性の
高い研究を総合すると、
1日にほんの少しの飲酒
(ワイングラス1杯よりも少なく)
であれば
心筋梗塞や脳梗塞、
糖尿病の死亡リスクは
少なくなりますが
それ以上になると
リスクは上がっていく
ことになります。
つまり350mlの缶ビール1杯
であっても
病気のリスクは上がります。
また、
がんはほんの少しの飲酒であっても
リスクが上がってしまいます。
つまり、
親族にがんになった方がいる場合は、
お酒は少量であっても
飲まない方がよいかもしれませんね。
そうでない方の場合、
週に2-3日の休肝日を作りながら
1日1杯弱楽しむ程度であれば、
健康に大きな悪影響はなさそうです。
元々お酒があまり飲めない方は、
これからも無理をして
飲む必要はないでしょう。
すでに心疾患や高血圧などの
病気がある方も同様です。
▶まとめ
今回はお酒が長期的にもたらす
健康への影響を紹介しましたが、
飲んだ直後の影響もあります。
例えば
・満腹中枢のコントロールが
効かなくなる
→食べすぎに繋がる
・利尿作用がある
→体は水と塩分を
一緒にため込もうとするので
締めのラーメンがどうしても
食べたくなる(血圧が上がる)
などなど。
宴会シーズン、お酒を
飲みすぎていませんか?
もちろん、
せっかくの楽しい時間。
適度に肝臓を休める日を作っていれば
飲みすぎに注意しながら
楽しむのはよいと思います。
ご自分のからだに耳を傾けて
無理のない程度に
楽しみましょう!
(※糖尿病、腎臓病、その他
何かの理由で通院・治療を
している方には、今回のお話は
当てはまらないことがあります。
必ず主治医と相談してくださいね。)
2019年のブログは以上です。
読んでくださった皆さん
ありがとうございました!
来年も皆さんの役に立つ
栄養のお話をお届けしていきます!
では、よいお年を。
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